選択理論心理学

選択理論心理学とは

選択理論心理学とは、アメリカの精神科医ウィリアム・グラッサー博士によって提唱された脳の働きを説明する理論です。人がなぜ、どのように行動するのかの脳の仕組みを理解し、行動 を伴う良い習慣を身につけることにより、周りの人とより良い人間関係を築き幸せに生きていくための方法論です。

基本的欲求とは

選択理論心理学では、人は皆、遺伝子の指示で生まれながらにして「5つの基本的欲求」を持っていると考えています。

〔愛・所属〕の欲求:愛し愛されたい、協力、仲間の一員でありたい など
〔力(承認)〕の欲求:認められたい、達成したい、人の役に立ちたい など
〔自由〕の欲求:自分で選びたい、強制されたくない など
〔楽しみ〕の欲求:学び、探求心、好奇心、笑い など
〔生存〕の欲求:食べたい、寝たい、安全 など

この欲求を満たすために、いろいろな願望を持ち、その願望を満たそうと行動しています。社会生活の中では、時には自分の願望のままの行動では周りの人に誤解を受けたり、受け入れてもらえず悩んだりとさまざまな問題が発生します。選択理論心理学は私たちに今までとは違う考え方・行動を選択することを教え、問題解決に導いてくれます。

上質世界~願望・イメージ写真~

上質世界とは、基本的欲求の一つ、または、それ以上を満たす人、物、状況、信条など各々が選んだイメージ写真のことです。例えば、楽しみの欲求は同じでも人によって満たし方が違い ます。ある人は読書であったり、ある人は映画であったり、その人がこの方法で満たしたいと思う願望のことです。親は、こどもに勉強して欲しいと思うとガミガミ言いたくなります。 しかし、こどもも「勉強して良い成績を取る」という上質世界を共有していなければ、なかなか親の思い通りの行動はしたがりません。親が無理やり勉強させようとすると、ふたりの人間 関係は悪くなっていきます。相手の上質世界に何があるのかを知ることは、より良い人間関係を築く上でとても大切なことです。つい私たちは自分の願望を相手に押し付けようとして、次 のような7つの致命的習慣を使って相手を変えようとします。

7つの致命的習慣|1.批判する 2.攻める 3.文句を言う 4.ガミガミいう 5.脅す 6.罰する 7.褒美でつる

この7つの習慣を使い続けると、ふたりの距離は離れてしまうのです。この7つの習慣を生活から排除することは、良好な人間関係を築く上でとても効果があります。そして、互いの上質 世界を分かちあって、相手の上質世界に何があるかを知ることです。7つの致命的習慣が日常的に使われている状況の中で、人は上質世界を分かち合おうとはしません。批判されるのを恐 れているからです。しかし、次のような行動を選択することで、人間関係を回復するコミュニケーションが取れるようになります。

7つの身につけたい習慣|1.傾聴する 2.受け入れる 3.励ます 4.支援する 5.信頼する 6.尊敬する 7.違いを交渉する

多くの人は、身近な人との良好な人間関係が築けず自分の思い通りに事が運ばないと、相手を変えようとして7つの致命的習慣を使ってしまいがちです。自分の行動は自分が選択していることを認めることが必要です。相手のせい、環境のせい、過去のせいと私たちは言い訳をしたくなりがちですが、言い訳を止めて、他人、環境、過去はどうであれ、自分の行動は自分が選択できると考えると希望が持てます。しかし、時に怒り、悲しみ、落ち込み、痛み、疲労感などの感情や生理反応(身体的症状)は自分ではどうしょうもない、と考えてしまうことがあります。そのような時に、私たちの行動は4つの構成要素〔行為・思考・感情・生理反応〕からなる「全行動」と理解することが助けとなります。

全行動とは

人は、頭の中で自分が願っているイメージ写真と、現実を比較しながら生活しています。私たちがとる行動は常に全行動です。その意味は「行為」「思考」「感情」「生理反応(身体的症状)」が常に一緒になって動くということです。例えば、こどもを叱るお母さんの「全行動」は大声で怒鳴る「行為」と、何でいつもそうなのという「思考」と、怒りの「感情」と、平常心でいる時より血圧が上がっているという「生理反応」の要素で成り立っています。この4つの構成要素は自分で変えやすい「行為」「思考」と自分では変えにくい(自分自身でコントロールする のは難しい)「感情」と「生理反応」に分けて考えることができます。怒りなどの「感情」と、頭が痛い、熱や汗が出るなどの「生理反応(身体的症状)」は自分で直接変えるのは難しいので すが、車で例えれば前輪にあたる「行為」と「思考」は自分でコントロールし、変えることができるのです。

行為、感情、思考、生理反応

人生は選択の連続

選択理論心理学では、「過去他人は変えられない、未来と自分は変えられる」と考えます。グラッサー博士は、「私たちは、過去や環境に振り回されることなく、自らの人生を自分の望む方向に進むべく選択できる」としています。自分を取り巻く小さな世界だけでもいろいろな出来事があり、対応に難しさを感じることが多くあります。特に身近な人との人間関係が上手くいかなくなった時に、私たちは困惑します。

そんな時は、

1.状況を的確に判断し、求めている状態と現状を明確にし
2.自分は何をすれば良いのかを選択し
3.自分が選択したことに責任を持つ

この3つの考え方を実践することでさまざまなトラブルを回避できます。人生は自分がより良い選択をすることで変えられます。過去のせい、人のせい、環境のせいにしないで、その環境の中で、自らが状況を判断し、ベストと思う選択をし、行動していきます。

教職員の継続的な学びと選択理論心理学を取り入れた学生指導

釧路専門学校では、2007年よりすべての教職員の研修に選択理論心理学を取り入れています。教職員は定期的に選択理論心理学を学び、学生サポートに役立てています。学生生活の中で発生するさまざまな悩みや問題解決のために、どのように考え、行動したらよいのかを学生自身が気づけるように、7つの身につけたい習慣を使ってサポートしています。

「幸せを育む素敵な人間関係」
「グラッサー博士の選択理論」
「選択理論を学校にークオリティースクールの実現に向けて」